法人税の基礎知識(マレーシア)

※本ガイドは主要な事項をわかりやすく記載しており、一部の事項を省略しています。実務適用にあたってはより詳細な法律等の理解が必要ですので、別途ご相談ください。

最終更新日:2024年12月5日


法人税率はどれくらいですか?

マレーシアの法人税率は 24% が標準です。
ただし、中小企業(SME)については、課税所得がRM600,000までの部分に対して 17% の軽減税率が適用されます。


どのような軽減税率がありますか?

SME向け軽減税率(Small and Medium Enterprises)

・条件:
 - 払込資本金がRM2,500,000以下
 - 関連会社の払込資本金もRM2,500,000以下
 - 上場企業またはその子会社でない

・内容:
 - 課税所得RM600,000まで → 17%
 - RM600,001以上 → 24%


欠損金は繰越しできますか?

・法人の繰越欠損金(Business Losses)は 10年間繰越可能 です。
・ただし、株主構成の大幅な変更や事業内容の変更がある場合には利用制限がかかる可能性があります。


キャピタル・ゲインの取り扱いは?

マレーシアでは原則として キャピタル・ゲイン非課税 です。
ただし、不動産取引については 不動産譲渡益課税(Real Property Gains Tax, RPGT) が課されます。

  • 個人・法人ともに対象
  • 保有期間によって課税率が変動
     例:
      - 3年以内売却 → 最大30%
      - 5年以上保有 → 5%

減価償却の取り扱いは?

会計上の減価償却はそのまま税務で認められず、代わりに 資本的控除(Capital Allowances) を適用します。

  • 工場、機械、車両などが対象
  • 初年度特別控除(Initial Allowance)と、毎年の定率控除(Annual Allowance)が設定されています

損金算入できる費用の特徴は?

マレーシアでは「事業遂行のために支出された費用」は損金算入可能ですが、以下の留意点があります。

  • エンターテインメント費用の一部は損金不算入
  • 自家用車関連費用は制限あり
  • 寄付金は登録済み団体へのもののみ一定割合で控除可
  • 減価償却ではなく Capital Allowances のみ認められる

居住法人・非居住法人の区分

  • 居住法人:マレーシア国内で経営管理されている法人(取締役会開催地などで判断)
     → 税優遇や租税条約適用が可能
  • 非居住法人:国外で経営管理されている法人
     → 税優遇を受けられず、源泉税の対象となる

国外源泉所得の取り扱い

マレーシアは属地主義を採用しており、国内源泉所得のみ課税対象。

ただし、2022年以降は国外所得送金課税制度が導入され、
居住法人が国外所得をマレーシアに送金した場合、課税対象となるケースがあります。


移転価格税制(Transfer Pricing)

  • 関連者取引については独立企業間価格(Arm’s Length Principle)が要求されます。
  • 売上がRM25百万以上または関連者間取引がRM15百万以上の場合、TP文書の作成義務あり。

グループ税制(Group Relief)

  • マレーシアでもグループリリーフ制度が存在。
  • 70%以上の持分関係があるグループ間で、繰越欠損金の移転が可能。
  • ただし、設立から3年以上経過している法人のみ対象。

税務調査(Tax Audit)

  • マレーシアでは「デスク監査」と「現場調査」があり、いずれも頻度は比較的高め。
  • 間違いが発覚した場合、追加課税に加えペナルティ(最大45%)が課される可能性あり。

法人税の申告・納付スケジュール

課税年度は基本的に会社の決算期に基づきます。

  • 暫定税額申告(CP204):決算期開始から3か月以内に提出
  • 毎月分割納付:12回に分けて納税
  • 確定申告(Form C):決算期末から7か月以内に提出

まとめ:法人税で悩んだら

マレーシアの法人税制度は、標準税率24%とシンガポールより高めですが、中小企業への優遇やキャピタルゲイン非課税の特徴があります。
一方で、国外所得課税や移転価格税制など国際課税対応は厳格化しているため、早めの税務戦略が重要です。

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